なぜ介護離職は「突然」起きるのか――介護制度があっても社員が動けない本当の理由
企業の人事・ダイバーシティ推進担当者の方から、
こんな声を聞くことがあります。
「介護休業制度も整えているのに、
ある日突然“親の介護で退職します”と言われてしまう」
けれど実は、介護離職の多くは本当に突然起きているわけではありません。
本人も企業も、その前兆に気づけていなかっただけなのです。
介護離職は「前触れのない出来事」ではない
親の体調の変化、暮らしのちょっとした不便、実家の安全環境、
いざという時の医療やお金、情報管理への不安――
こうした小さな違和感は、数年かけて少しずつ積み重なっています。
しかし社員本人は、
- まだ大丈夫だろう
- 忙しくて考える余裕がない
- 何から手をつければいいかわからない
と先送りを続けがちです。
そして、入院や転倒、認知症などをきっかけに一気に状況が変わり、
「もう仕事を続けられない」という決断に至ります。
これが、企業側から見る“突然の介護離職”の正体です。
なぜ制度があっても社員は動けないのか
介護支援制度の多くは、
介護が始まってから使うことを前提としています。
一方で社員は、
- 介護と呼ぶほどではない
- でも常に不安はある
- 親とも話せていない
という“グレーゾーン”に長く留まります。
この段階では、
- 窓口相談するほどではない
- 制度を調べる余裕もない
結果として、制度と社員の間に空白期間が生まれてしまうのです。
介護離職防止に必要なのは「制度+気づきと準備」
私が生前整理コンシェルジュとして現場で感じているのは、
介護離職防止には
「制度」+「気づきと準備」
が欠かせないということです。
ここでいう「準備」とは、
- 親の変化に気づく視点を持つ
- 親と将来の話をするきっかけをつくる
- 実家・モノ・情報を整理し始める
といった、介護が始まる前にできる行動です。
生前整理は、介護離職防止の“前段階支援”
生前整理は、終活や片づけのためのものではありません。
モノ・心・情報を整理し、
家族と「話せる状態」をつくることが本質です。
親が元気なうちに少しずつ準備を始めておくことで、
- 介護が始まっても慌てない
- 社員が仕事を手放さずに済む
- 企業も余裕をもって支援できる
そんな土台が整っていきます。
おわりに
介護離職防止は、
「介護が始まってから対応する課題」ではありません。
社員が元気に働いている“今”こそ、
親の暮らしや変化に気づく視点を持てるかどうかが、
その後の働き方を大きく左右します。
生前整理は、
社員に不安を植え付けるものではなく、
**人生と家族を整えるための“前向きな準備”**です。
制度を生かすための前段階として、
企業の介護離職防止施策に取り入れていただくことで、
社員も企業も、余裕をもって次の一歩を踏み出せるようになります。
▶ 関連記事
親の変化に気づくために、まず何から始めればいいのか?
帰省時や日常の中で使えるチェックポイントをまとめています。
帰省時に使える「親と実家のチェックリスト」─ 親の暮らしサポート、何から始めればいい?─
