親が元気なうちの「生前整理」は介護離職防止の入口になる
こんにちは。生前整理コンシェルジュ/介護離職防止対策アドバイザーの村上 充恵です。
企業にとって、介護離職は「突然の出来事」と捉えられがちです。ある日突然、社員から「働き続けるのが難しい」と打ち明けられるケースが多いためです。
そこで人事担当者が特に意識したいのが、本格的な介護に至る前の「介護未満(グレーゾーン)」という段階。まだ本格的な介護は始まっていないものの、社員が親の変化、実家の不安、将来の介護を少しずつ意識し始めている段階、言い換えると「介護未満」の状態です。
介護離職防止のためには、「介護未満」ステージにいる社員へ、介護準備情報とアクションのきっかけを届けることが重要です。
今回は、「介護未満」ステージでの有効なツール、「生前整理」メソッドの概要と、「親の生前整理」のコツについてお伝えします。
介護が始まる前に、親に確認しておきたいことは?
介護が始まる前に親に確認しておきたい情報はたくさんあります。
しかし実際の話し合いの場では、下記のように親子の意識がすれ違いやすいテーマがあります。
- 「たくさんあるモノを処分して」「この家どうするの?」
〈子〉⇒安全に暮らしてほしい、ガラクタを残されても困る、介護になったらどうしよう・・・
〈親〉⇒「捨てる」が苦手な親世代。モノの処分をめぐって親子げんかが起こりがち
- 「お金はいくらあるの?」「遺言書は書いてる?」
〈子〉⇒金銭管理を手伝いたい、施設探しも必要?、相続が気になる・・・
〈親〉⇒「遺産を狙っている」と警戒し、銀行口座やパスワードなどを教えたがらない
- 「エンディングノートを書いて」「墓じまいしたほうが良くない?」
〈子〉⇒介護や延命治療の意思を聞いておきたい、葬儀やお墓はどうしたいのか・・・
〈親〉⇒病気や介護、死のことは考えたくないので現実逃避。ごまかしたリ、怒ったり
親は元気だからこそ、これらの「終活」に近いテーマへの拒否反応が強くなるとも言えます。
しかし、介護が始まってから慌てて確認しようとしても、うまくいかないことが多いもの。
だからこそ、「生前整理」のメソッドは、介護になる手前の情報整理で効果的です。
「生前整理」メソッドは、親の「介護未満」に有効
- 親や実家の気になることが増えてきた
- 親の変化に気づいているが、言い出せない
- 実家のモノを捨てたいが、ケンカになる
- 終活してほしいと言ったら、嫌な顔をされた
- 介護など将来が不安、何か準備できないか
社員が40〜50代を迎え、こんな状況が気になったら、「親の生前整理」のはじめどきと言えます。
介護の始まる前の「介護未満」の段階であるからこそ、適切なコミュニケーションとサポートを始める余裕のある状態だからです。
なお、「介護未満」の段階については以下の記事でも解説しております。
介護離職の手前にある ”グレーゾーン”/40~50代社員が抱える「介護未満」とは?
「生前整理」メソッドの3つのポイント
「生前整理」というと、モノの片づけである断捨離やエンディングノートなどを書く終活・相続をイメージする方が多いかもしれません。
生前整理普及協会の提唱する「生前整理」は「元気なうちにモノ・心・情報を整理すること」。
ポイントとなる取組みは大きく3つあります。
- モノ:思い出の品や写真などを整理する
プライスレスな大切なモノ(思い出のモノや写真・アルバムなど)から整理します - 心:心を整理し、未来をデザインする
人生を振りかえり心を整えたら、この先の目標/やりたいことリストを作ります - 情報:健康・住まい・財産・介護・相続などの情報をまとめ、大切な人に伝える
「生前整理」では健康・住まい・財産・からエンディング・相続まで、情報をまとめ共有の準備をします。
「断捨離」のように“捨てる”から始めない、「終活」のように“亡くなる前の準備”でもない、ハードルが低く取り組みやすさが特徴。
基本はご本人が、充実して生ききるために取り組むメソッドです。
介護離職防止の観点からは、「親が元気なうちに、モノ・心・情報を家族で確認する取り組み」と捉えることができます。
「親の生前整理」を成功させるには、コツがあります
介護が始まる前の情報収集では、“子世代と親世代の意識のズレ”というハードルが存在します。
- 子世代としては、「やってほしい」「知っておきたい」「準備しておきたい」
⇒忙しい中、効率よく進める手法になりがち - 親世代は、「病気や死について考えたくない」「子供に指図されたくない」
⇒現実逃避、ごまかす、怒る
このため、
- 話が切り出しにくく、結局何もできなかった
- ケンカなどトラブルで止めてしまった
- 何もできないまま介護が始まり後悔した
などの失敗談をよく聞きます。
そこで「親の生前整理」メソッドを入口にすると、介護や終活の話題も重くならず、親子のコミュニケーションや暮らしの見直しテーマとして、伝えやすくなります。「親の生前整理」をスムーズに進めるコツとしては、以下の取組みを順番通り進めることが基本です。
- 一緒に「思い出」「写真」の整理からスタートし、気持ちを共有する
- コミュニケーションが増えると、親の心が整って信頼関係が高まる
- 親の将来の希望に沿って「情報」のまとめと確認をする
特に 「2.心の整理」を軽んじて親の心が不安定なままだと、次の 「3.情報のまとめ」が「終活」と受け取られてしまい、強い拒否感が出る可能性があります。
「親の生前整理」の具体的方法やコミュニケーション術などは、セミナー内でお伝えしています。
元気なうちに親と「生前整理」をしておくメリット
最後に社員が、親が元気なうちに「生前整理」に取り組むメリットをまとめると、次の3つになります。
- 親子の良い思い出ができるだけでなく、信頼関係が深まるので、その後もトラブルが少ない
- 親の状況に応じた介護未満サポートができるので、介護が始まっても慌てずに対応できる
- 必要なサポートが早い段階で可視化できるため、タイミングよく会社に相談することができる
まとめ
介護離職防止のためには、親の介護が必要になる前の「介護未満」期からの対策が鍵となります。
親が元気なうちに行う「生前整理」は、モノを捨てる行為ではなく、写真や思い出を共有し、親子間の信頼関係を深めるコミュニケーション手法です。
親の状況を早期に知ることは、結果として介護離職を防ぎ、必要なタイミングでの会社への相談をしやすくします。
人事担当者として、この「生前整理」を社員のセルフケアや社内施策として推進することは、社員の働き続けやすさを高める有効なアプローチです。
社員の親子のコミュニケーションを活発にして、万が一に備える新たな働き方支援を始めてみませんか。
以下の記事では、社員向け「親の生前整理」研修プログラム(全3回)の概要や他社導入事例を紹介しています。
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「介護離職防止と生前整理」については、以下の記事でも発信しております。順不同で、どの記事からでもお読みいただけます。
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