人事が知っておきたい、介護離職防止に「生前整理」が役立つ3つの理由
こんにちは。生前整理コンシェルジュ/介護離職防止対策アドバイザーの村上充恵です。
企業の人事・ダイバーシティ推進担当者の方から、こんな声を聞くことがあります。
ベテラン社員から「母が入院したので、しばらく休む」と連絡があった。
数週間後に突然、「母に介護が必要なので、退職を考えています」と言われ、
社内の介護支援制度を案内したが、程なくして離職してしまった。
このように介護が始まった直後に、社員が突然退職することが近年問題になっています。
国の調査でも、介護・看護を理由に過去1年間に前職を離れた人は2022年で10.6万人。2017年の9.9万人から増加傾向にあります。(参考:総務省)
会社として介護支援制度を用意しているのに、なぜ突然の介護離職が起きるのでしょうか。
今回は、社員が介護支援制度を十分に活用しないまま、突然離職してしまう理由と、離職防止に『生前整理』を活用するメリットについて取り上げます。
介護離職が「突然」起きる理由
企業から見ると、介護離職は突然起きるように見えます。しかし社員にとっては、親の入院や体調悪化などをきっかけに、積み重なっていた課題が一気に表面化している例が少なくありません。
原因の1つに、社員の介護への向き合い方にあります。親が元気なうちは、社員自身が介護を「自分ごと」として捉えにくく、次のような状態が続きがちです。
・親と離れて住み、親の持病・家計・暮らしぶりなどはよく知らない
・仕事や家庭を優先し、親の介護のことは考えていない
・国や会社独自の介護支援制度をよく知らない
こういった状態から介護が始まると、社員は「誰に支援を求めればよいか」「介護と仕事の両立」などを一人で抱え込み、離職してしまうケースが多くあります。
介護支援制度を用意してもなぜ使われないのか
社内の介護支援制度が使われない主な理由の1つは、制度自体の認知度が低く、利用率が低いことです。
実際ある調査では、正規労働者のうち介護休業制度の内容を知っていた人は約41%、制度・相談先の「どちらも知らない」と回答した人も約33%いました。(参考:厚生労働省)
さらに、介護中の雇用者のうち、過去1年間に介護休業等の制度を利用した人は11.6%にとどまっています。(参考:e-Stat)
これらの数字が示しているのは、介護中の社員が制度を使うまで至らないケースが多いという事実です。
社員から能動的に制度を利用してもらうにはどんな工夫が有効でしょうか?
東京都を例にすると、東京都産業労働局のWebサイトには各企業の介護支援事例の成果が報告されています。(参考:東京都産業労働局)
- 実態を把握して制度を見直した(花王株式会社、ソフトバンク株式会社など)
- 従業員の介護状況、不安、ニーズを把握し、制度設計や見直しに反映する。
- 相談先を設けた(株式会社白川プロ、コーデンシTK株式会社など)
- 介護に直面する前後で、社内担当者、外部の専門家、ケアマネに相談できる体制を用意
- 上司や経営層が介護支援の必要性を発信し、相談しやすい職場風土をつくる
- 早めの情報提供をシステム化した(EY Japan、ソフトバンク株式会社など)
- セミナーなどで介護の心構え、制度、費用、専門家相談について知る機会を提供し、早めの備えを促す
- 介護ガイドブックの配布や社内介護ポータルサイトを開設し、社内制度や地域支援、介護の基礎知識をまとめ、社員が必要時に参照できるようにする
- 柔軟な働き方を推進した(株式会社白川プロ、コマツ、ソフトバンク株式会社、コーデンシTK株式会社など)
- 介護休暇・積立有休など制度拡充。法定を上回る休暇、有給化、積立有休、半日取得などで、休みやすさを高める
- 在宅勤務・リモートワーク・短時間勤務・フレックス等の勤務形態を採用し、介護の時間的負担に合わせて、勤務時間を柔軟に調整できるようにする
- 業務共有・属人化防止に向けて、急な休みや時短勤務でも周囲が対応できるよう、業務フロー、進捗、マニュアルを見える化する
上記の企業のように、介護離職対策を導入し、その取り組みを実効性のあるものにするには、企業と社員の双方が、介護に直面する前から準備を進めておく必要があります。
- 企業は、支援制度や介護の基礎情報の周知に加え、「介護と働き方を前向きに相談してよい」職場づくりを進める
- 社員が、親の生活状況、地域の地域包括支援センター、自社の介護支援制度を早めに確認しておく
つまり、介護離職対策の出発点は、社員に早い段階で介護を「自分ごと」として考えてもらうことです。
その入口として役立つのが、『生前整理』です。
介護支援制度を活かすために、『生前整理』が役立つ3つの理由
『生前整理』というと、「断捨離」や「終活」をイメージされる方も多いかもしれません。しかし、介護離職防止の視点で見ると、『生前整理』はモノの整理だけではありません。
『生前整理』とは、親の暮らし、持ち物、情報を少しずつ整理しながら、
- これから何をサポートするか
- どのサービスを使うべきか
を見えるようにしていく準備です。
ここからは、『生前整理』のプロセスが仕事と介護の両立準備にどのように役立つのか、3つの観点から整理します。
1. 親の変化に早く気づける
親と『生前整理』をすると、親の変化にいち早く気づくきっかけになります。
モノや写真を整理しながら、これは大切だね、これも懐かしいね、とコミュニケーションのきっかけになり、また、人生経験や思い出を共有する機会を通じて、お互いの信頼関係を高めることができます。
コミュニケーションを密にして早い段階で変化に気づければ、社員本人も「そろそろ介護の備えが必要かもしれない」と考えやすくなり、心の準備、覚悟もしておけます。
その結果、介護が始まっても、仕事と介護を両立できる可能性は高まるでしょう。
2. 必要な外部サービスや福祉支援を準備しておける
介護関連の情報は多く持っていたほうが、介護スタート時の負担を軽くできます。
『生前整理』を通じて、親が元気なうちに以下のような項目を確認しておくことで、介護が必要になったときの対応がしやすくなります。
- 親の健康状態、かかりつけの病院の把握
- 地域の福祉支援の確認(例:地域包括支援センターなど)
- 外部サービスの検討(例:みまもり、配食サービスなど)
これらは、社員が仕事を続けながら介護と向き合うための第一歩になります。
※地域包括支援センターとは、「高齢者に関する困りごとがあったときの、最初の相談先」と考えると良いでしょう。高齢者やその家族が、介護・医療・生活について相談できる地域の総合窓口で、市区町村が設置し、保健師・社会福祉士・ケアマネジャーなどの専門職が対応します。
3. 会社に相談する内容が明確になる
介護支援制度を利用するためには、まず社員が会社へ状況を伝え、相談することが必要です。
『生前整理』を通じて、親の状況、今後必要になりそうなサポートが可視化できると、適切なタイミングで会社にも相談しやすくなります。
例えば、介護休暇(休職)、時短勤務、在宅勤務の検討など、今後の働き方も柔軟に検討しやすくなります。
介護離職防止に向けた「生前整理」メソッドの活用については、以下の記事でもご紹介しています。
親が元気なうちの「生前整理」は介護離職防止の入口になる
まとめ
国の研究によれば、2030年にビジネスケアラーが約318万人となり、仕事と介護の両立困難による経済損失を約9.2兆円と試算しています。そのうち約7.9兆円は労働生産性の低下による損失です。(参考:経済産業省)
つまり、介護離職の防止は、社員個人だけでなく、企業にとっても必ず対応すべき課題です。
介護離職を防ぐために介護支援制度を用意する「だけ」では、社員が十分に制度を使えるとは限りません。
社内制度の周知に加えて、社員が早めに備えられるきっかけをつくることが欠かせないのです。
その入口として、『生前整理』は役立ちます。親が元気なうちから暮らしや情報を整理することで、社員は親の変化に気づきやすくなり、外部サービスや会社の制度にもつながりやすくなります。『生前整理』を学ぶことは、社員が介護と仕事を両立し、企業が大切な人材を失わないための一助になります。
大切なのは、社員が親の状況を早めに把握し、必要な支援や相談先を整理し、介護が始まったときに一人で抱え込まない状態をつくることです。
以下の記事では、『生前整理』を社内研修プログラムに取り入れることで、社員一人ひとりが「介護とキャリア」に向き合い、突然の介護離職を防ぐための備えについて説明しています。ぜひご一読ください。
親が元気なうちの「生前整理」は介護離職防止の入口になる
また、以下の記事では、社員向け「親の生前整理」研修プログラム(全3回)の概要や他社導入事例を紹介しています。人事担当者向けのオンライン体験会日程も案内中ですので、チェックいただければ幸いです。
介護離職防止に向けた社員向け「生前整理」講座・オンライン研修のご案内
更に、同研修プログラムの「デモ講座」をストアカ(オンライン講座)で実施中ですので、お気軽にご参加ください。
詳細とお申込みは⇒ 【人事向け体験会】介護離職を防ぐ「親の生前整理」社内研修導入デモ講座(ストアカ)
「介護離職防止と生前整理」については、以下の記事でも発信しております。順不同で、どの記事からでもお読みいただけます。
人事が知っておきたい、介護離職防止に「生前整理」が役立つ3つの理由【現在の記事】
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