親世代はなぜモノを捨てられないのか ― 世代の価値観を知れば、実家はもっと片づく ―

久しぶりに実家に帰ったら、なんだかモノが増えている…そんなふうに感じたことはありませんか?
押し入れの奥に眠るタオルセット、使われないままの贈答品。
「使わないなら捨てよう」と言えば、「まだ使えるのにもったいない」と返ってくる。

親との片づけでぶつかってしまうのは、どの家庭でもよくあることです。
でも、ケンカになる前に知っておきたいのが、「世代ごとのモノの価値観の違い」
それを理解するだけで、実家の片づけはぐっとスムーズになります。

1|モノをたくさん持つことが「豊か」だった時代

戦中・戦後を経験した親世代にとって、“モノを大切にする”ことは生きる知恵でした。
「もったいない」「まだ使える」「高価だった」「いただいた人に悪い」——そんな思いから、
押し入れや納戸には新品のままの贈答品や使われない家電が箱ごと眠っているご家庭も少なくありません。

さらに、高度経済成長期を生き抜いた世代は、「働けば豊かになれる」「新しいモノが幸せを運ぶ」と信じてきました。
家電や洋服、趣味の品……あらゆるモノが“努力の証”であり、“家族の幸福の象徴”でもあったのです。

だからこそ、「片づけよう」「捨てよう」と子ども世代が軽く言ってしまうと、
親は“自分の人生を否定されたような気持ち”になることがあります。
また、高齢になると体力や判断力の低下もあり、「片づけたいけれどできない」現実もあります。


2|子世代・孫世代は「選ぶ」「持たない」時代へ

50代60代のバブル世代は、モノに囲まれた時代を経験しながらも、
「自分の価値観で選ぶ」「お気に入りだけを持つ」傾向が強い世代です。
一方、40代以下は“持たない暮らし”を重視し、
サブスクやレンタルなど「所有しないライフスタイル」が当たり前になっています。

さらに20代以下の孫世代では、古着や昭和グッズが人気。
「おじいちゃんの家は宝の山みたい!」と感じる柔軟な感性も見られます。

つまり、世代ごとに「モノとの距離感」がまったく違うのです。
お互いの違いを理解し合うことから、片づけははじめて前に進みます。

3|「捨てる」ではなく「手放す」——心が動く言葉を選ぶ

親世代にとって、「捨てる」という言葉はとても重く響きます。
私は、実家の片づけに悩む方には「手放す」という言葉を使うようアドバイスしています。

“処分”ではなく、“次に生かす”という発想です。
買取・リユース・寄付・供養など、モノと気持ちにあった手放しかたを知ることで、
「誰かに使ってもらえるなら」と納得される親御さんが多いです。

また、「高かったから」「思い出がある」「また使うかも」と迷う時は、
モノではなく「使う」か「使わない」か“自分の気持ち”に焦点を当ててみてください。
「ありがとう」と感謝して見送ることが、モノへの執着を手放す第一歩です。

4|価値観を認め合えば、片づけは争いではなく“対話”になる

時代も性格も違う親子が同じ方法で片づけようとしてもうまくいかないのは当然です。
「自分の基準で判断しない」「妥協と歩み寄りを意識する」——
この二つを心がけるだけで、親の家の片づけは驚くほど穏やかに進みます。

片づけは、単にモノを捨てる行為ではなく、これからの暮らしを整える時間
一緒に取り組むことで、親の人生を振り返るきっかけにもなり、
親子の信頼関係がより深まっていくことでしょう。

5|まとめ ― 「ありがとう」と言える片づけを

モノを通して見えるのは、親が生きてきた時代の記憶そのものなのです。
「捨てる」ではなく“ありがとう“と「手放す」整理を。
そこから始まる“心の生前整理”こそ、親も子も穏やかに暮らすための第一歩です。